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大阪高等裁判所 昭和57年(行コ)13号 判決

控訴人(原告) 松井勘兵衛

被控訴人(被告) 国

訴訟代理人 浅尾俊久 紀純一

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「1 原判決を取消す。2 控訴人の申し出にかかる大津地方検察庁昭和五六年(補)第三号被疑者補償請求につき、検察官が昭和五六年四月二〇日付検第一七五号をもつてなした補償をしない旨の裁定はこれを取消す。3 被控訴人は控訴人に対し金一〇万五六〇〇円及びこれに対する昭和五三年六月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。4 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに第三項につき仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の裁定の取消を求める請求は不適法として却下し、補償金の支払を求める請求は理由がなく棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、次に訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目裏九行目を次のとおり改め、一二行目の「(以下」から末行の「という)」を削除する。

「本件は、控訴人が被疑者補償規程に基づき補償の申し出をしたところ、検察官が補償しない旨の裁定をしたとして、右裁定の取消を求め、合わせて右補償規定に基づき補償金の支払を求めるものである。」

2  同四枚目裏一行目から七枚目表二行目までを次のとおり改める。

「ところで、被疑者補償規程は法務省訓令として定められてはいるものの、訓令は国家行政組織法一四条二項に基づき大臣がその機関の所掌事務について命令又は示達するための行政組織内部における命令であつて、国民の権利義務に直接効力を及ぼすものではない。したがつて、被疑者補償規程は、検察官に対しては右規程により被疑者に補償すべき義務と権限を与えたものではあるが、国の法律上の義務を定めたものではないから、国民も右規定によつて補償請求権を取得できない。

よつて、控訴人が被疑者補償規程に基づき補償の申し出をしたのに対し検察者が補償しない裁定をしたからといつて、右裁定は控訴人に対し何等法律的効果を及ぼすことがないから抗告訴訟の対象となる行政処分とはいえず、また控訴人が被疑者補償規程によつて、直接補償請求権を取得することはあり得ない。」

二  そうすると、右判断と同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲西二郎 長谷喜仁 下村浩蔵)

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